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 外国人の目による当時の萬古焼の様子については、明治初頭の日本を実際に歩いたイギリス人のクリストファー・ドレッサー(1834~1904)とアメリカ人のエドワード・モース(1838~1925)が感想を残している。

 19世紀後半に活躍したイギリス人デザイナーのドレッサーは、イギリスのサウス・ケンジントン博物館から日本へ寄贈するためのヨーロッパの工芸品約300点を携えて来日した。その際彼は、日本の工芸や産業について欧米で通用するものがあるか等を日本政府に諮問され、明治九(1876)年から翌年にかけて日本各地を視察し、彼自身が逐次意見を述べている。それらを同行した日本側でまとめた「英国ドクトルドレッセル同行報告書(石田為武筆録)」が遺されているが、その中での萬古は、

   「第六十一 萬古陶器

   勢州四日市二於テ製造スル所ハ萬古陶器ノ工人ナル中山孫七山中忠左衛門蔀庄平等ノ造リタル陶器是ナリ只其着色彩画トモ甚ダ雑製ナレハ商用ノ目的ヲ立テ難ク以テ英国ノ需用二適応セス然レモ小向村森与五左衛門ノ製陶ハ一種同等ナリト雖モ其ノ甚ダ精巧ニシテ殊ニ彩画ノ如キモ日本従来ノ古紋類ヲ着色シテ甚ダ雅致アルヲ以テ其品位ハ中山其外ノ陶器ニ超越シテ大ニ需要ス可キ物多シ…(後略)」

とあり、主な陶工に四日市では中山孫七・山中忠左衛門・蔀莊平、小向村の森與五左衛門(有節)をあげている。内容としては四日市の陶工の作品について雑器であるとして輸出に向かないという反面、有節についてはイギリスにおいても「倫敦ノ売買ニ於テ賞誉アルベシ」と絶賛している。このことからも明治初頭の当時、有節の萬古焼が高く評価されていたことが分かり、ドレッサーの歩いた時代にはまだ四日市萬古は開花前であったと思われる。

​【開花前という考えは訂正される。四日市のやきものは幕末より田端教正の海蔵庵窯、上島庄助の四日市焼、圦山開之助、山中忠左衛門、蔀莊平など多数の陶工が技を競っていたことが分ってきている。逆に有節家は作陶が縮小しているかの如くの記述もある。】

 もう一人の外国人、日本陶器目録を遺したモースは日本滞在中に日本の陶磁器を収集したことで知られ、その5000点に及ぶコレクション中、伊勢のやきものとして萬古焼が取り上げられている。

 収集された萬古焼が、陳列台や目録に占めるボリュームとしては、古九谷や再興九谷がある加賀、古陶六窯のひとつ備前などと並んでいる。このことは萬古焼に対してモースの関心が高かった、もしくは当時の市場のなかで萬古焼は豊富な数の流通があったということがいえると考えられる。

 モースはその記述の中で、当時の世界で萬古がすでに認知され、外国人の嗜好にあったやきものを作っていたことが紹介され、その作品の特徴としては手捻、木型作り、浮き彫り細工や無釉に粉彩の花、練り込みなどをあげ、有節萬古や明治初頭の桑名や四日市の萬古焼を示していると思われる。

 また、目録は作者や印銘などの項目によってまとめられている形式をもっているが、その項目の中で、有節とともに、四日市萬古の陶工嘉助と半助が一項目として挙げられ、その名人技を紹介している。しかしその半面、堀友直(当時は四日市萬古)や精陶軒(桑名萬古)、岡本城峯(四日市萬古で雅号は無眼楽)が「詳しくは分からない」項目のなかに印銘などで紹介され分類されている。

 ドレッサーの日本視察は明治十(1877)年に行われ、モースの陶器収集は明治十五(1882)年から本格的に始められている。ともに日本の工芸品を美術的な視点からでなく、それぞれの価値観で客観的に着目している中で萬古焼が取り上げられているのは興味深い。取り上げている陶工などに出入りはあるが、当時の伊勢の萬古焼の状況を知る上で重要な資料といえる。

 この2人の時間差から、ドレッサーの指摘(1877)を受けた四日市の陶工たちが、試行錯誤を重ね、別格の有節とはまた違う技術(薄作りの手捻急須など)や造形(グロテスクな貼り付けものなど)を生み出し、モースの目に留まる(1882)までになったともいえのではないだろうか。

 この見解は概ね平成17年頃のものです。令和初年以降新資料の確認や研究が進み、有節焼や桑名や四日市での新しい「明治の萬古焼」の姿が分ってきています。詳しくは瑞垣、桑名市博物館紀要、皇學館論叢等ご確認ください。

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